患者は良くなりたい。
どう良くなりたいかと言えば、
1)ひどいままの状態から抜け出したい。
2)アトピーの出ない体になりたい。
患者はより良い治療法を求める。
より良い治療とは、より効く治療。
1)に良く効くのは、ステロイド・プロトピック
けれどひどい患者なら、それでもまだ不充分。
2)に良く効く薬は無い。
どの程度効くか分からない地道な生活上の努力、そして
自然治癒という「日にち薬」の期待があるのみ。
患者は期待を寄せる、一挙解決の特効薬の誕生に。
けれど、そんなものがありうるのか?。
アトピーの根本原因は、いまだ未解明。
発症機序も軽快する機序も、充分に解っていない。
ならば、根本治療など生み出せる道理がないではないか。
私たちが頼りにする現代西洋医学にできるのは、
不都合な反応の抑制か、問題ある箇所の除去。
さらに技術が進んだとして、遺伝子の操作。
体質のみがアトピーの原因であるなら、
当該遺伝子の排除は、根本治療になりうるだろう。
しかし、家系外での発症の増加は、それを否定する。
癌のように限局した病気ではないから、
アトピーは、手術で除去してしまうこともできない。
であるならば、西洋医学のアトピー治療の方向性は、
アトピーの発症機序の解っている部分のどこかを、
抑え込む方向でしか、ありえない。
免疫を抑える、炎症を抑える、といったふうに。
けれど、どこかを抑えれば、どこかがとび出すものだ。
体に異物が入れば、それに対し何らかの反応が起きる。
強力に効く薬であれば、副作用も強力。
それが普通だろう。
副作用の可能性のない薬なんて、ありえない。
簡単にハイリターンが得られる治療は、必然的に、
ハイリスクである可能性を、内包している。
残念だが、それがものの道理なのだ。
努力も無しに得られる、夢のような治癒。
そんなものがあればいいけど、ありはしないだろう。
特効薬を求めるな。
その気持ちは、手っ取り早く確実に患者を治したいという
医師の気持ちと、共振する。
結果は、短期の強い効果と、長期の強い副作用である。
ステロイドを処方しているのはもちろん医師だが、
短時間で確実に効くものを、という患者の要求は、
それを促進する要因となってしまう。
その促進効果は、ステロイドの過剰な普及を、
第2のステロイド、プロトピックの定着を、助ける。
さらには患者の本来の望みとは裏腹に、
第3、第4のステロイドの誕生を促すだろう。
アトピーの根本原因が、解らない除けない状態では、
アレルギー対策なり、生活整備なり、皮膚の手当てなり、
経験的に多少なりと成果を挙げてきたらしい方策たちが、
現実的な対処である。
スローライフへ。スローキュアー(slow cure)へ。
医師も患者も社会も、方向転換が必要だと思う。
2008.9.