アトピー性皮膚炎の患者の苦痛として、「痒み」は非常によく語られるが、「痛み」が認識されることは殆ど無い。
しかし現実には、痒みと痛みはセットになって訪れる。
激しい痒みの波が去った後、かわって今度は傷付いた皮膚が激しく痛み出す。
この痛みが重要視されないのは、おそらく掻破と結び付けられるからだろう。
すなわち、掻き破るから皮膚が傷付き痛くなるという二次的な症状であって、本来のアトピー性皮膚炎の症状ではないというわけだ。
そうはいっても、身をえぐっても尚おさまらぬ程の激しい痒みを生じるのがアトピー性皮膚炎なのだから、この痛みという苦痛は患者にとって逃れがたい問題である。
重症である程、痒みが強い故に傷も酷く痛みも強くなる。
さすればこの痛みが患者の心身に及ぼす悪影響もばかにならないと考えるべきでないか。
仮に全く掻破しないことができたとする。
それでも、アトピー性皮膚炎の皮疹(皮膚の症状)である湿疹性の変化の経過中には、亀裂が生じたり水疱が破れて糜爛になったりする。
これらは当然痛む。
そもそも皮膚のバリア機能の障害がアトピー性皮膚炎の病態なのだから、患者の皮膚は本来「傷だらけの皮膚」なのだ。
痛むことに何の不思議があるだろう。