[治せないって言って] |
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この2月に東京で皮膚科の学会があった。 全国を4つの支部に分けたうちの1つのものだから、大きな学会と言える。 その中の「アトピーの治療と今後の展望」という講演に、こういう主張があった。 - アトピー性皮膚炎は完全な原因療法は困難であり、対症療法を行うべき疾患であることを、何の恥じらいもなく患者に伝えるべきである。-
この発表は、2、3の患者の経過報告のような小さな発表ではない。 そして、脱ステロイドをしている患者さんたちは、この発言を、どうお感じになるだろうか?。
私は、複雑な感情を持ちつつも、一歩前進とプラスに評価したいと思っている。
起きてしまった皮膚の炎症はステロイドやプロトピックで消退させ、保湿剤で足りないバリア機能を補い、痒みの発生を抗ヒスタミン剤で抑える。
アトピーは一般的には紛れもなくアレルギーの病気の1つと考えられているが、これらの治療にもちろん、患者をアレルギーが起こらない体に変えていくような力はない。 最近原因として重視されている、皮膚のバリア機能の障害にしても、いくら保湿剤を懸命に塗ったところで、健康な皮膚に生まれ変われるわけではない。 原因療法という意味では、いまの医療は非常に無力なのである。
だから患者は、対症療法でいったんは安寧を得られても、多くの場合、再びぶり返す症状に悩まされることになる。 この当たり前の事実が、無視されているのは、非常にまずい。 なぜなら、アトピーにおいては、沢山の人が悩んでいることを反映して、専門家による教育書や講演やメディアへの出演やホームページなど、あらゆる形での情報が絶え間なく発信され続けている。
それらの中で、医師側は、今の症状を改善させる方法を指導する。
それが、「治ると思ってずっと言われた通り頑張ってきたのに、治らないじゃないか。」という患者の憤り、ひいては医療不信だ。
医師というものは、患者にとって、病気の解決策を示してくれるべき存在である。
けれど、だからといって、医師が自分の立場とプライドを守るために、自分を過大に見せようとしてはいけないのだと思う。
そういう目で見ていくと、件(くだん)の医師の主張の中にも、立場とプライドのなせるものと思われる部分がある。
「アトピーがどのようにして生じるか」を解明し、「どうすれば治せるか」という方策を見つけ出そうという不断の追求が、今日も世界中の研究者と臨床家によって行われている。
そうして思う。
高率に治せる治療を、患者に強く勧めるのは筋が通っている。 それを、「標準」という言葉で縛り、「行うべき治療」だとし、行わない者を間違っているように言うのは、あらゆる状況にある全ての患者を自分たちの管理下に置きたいという、医師のエゴなのではないだろうか。
医師が病気を全て治せるのでないことは、賢明な患者はとっくに分かっている。
2011.2 |