アトピー性皮膚炎は、自然治癒(もしくは軽快)の可能性を多分に含んだ疾患である。
とはいえ、それは誰にでも起こるわけではない。
高雄病院江部康二医師の著作「アトピー治療の新しい道」を読んだとき、氏がいわゆる民間療法のからくりを述べる中で、
「どんな民間療法でも約一割前後はうまくいく症例があるよう」
だとあった。その一行が、私の頭の中にひっかかった。
豊富な経験を持つ氏が、他の医師らや患者にも聞いて得た見解である。とても興味深い。
氏の議論の要旨は、残りの九割をどうするかという点にあったが、それはそれとして、私にはその一割がとても気になった。
患者ならば、この気持ちは分かると思う。どんな方法だろうが、病気は、治ってしまった者の「勝ち」なのだ。
確かに巷には、あれで治った、これで治りますという体験談が溢れている。
その中には、「何でこんなもので??」と思うような、作用機序の全く推し量り難いものまである。
それでも、それら全てが虚像ややらせなのではなく、実際にいろいろな療法で治ってしまっている人たちが存在する。
なぜ、そういうことが起こるのだろう?と、ずっと疑問に思っていた。
精神神経免疫学、イメージ療法を学んで、その謎が解けた。
人の脳は、無意識のレベルで治癒の確信を持つと、身体を実際に治す方向へと働かせるのだという。
すなわち、それがある治療法だとする。
その治療法に接して、患者が、「ああ、自分はこれで治るんだ」という確信を、意識できるレベルではなく、より深い、脳の意識されないレベルで抱くことができたとき、自然治癒力の発動が促されるのだそうである。
治療者がその療法を絶対的に信じており、患者が治療者をまた絶対的に信じていれば、そのことは起こりやすいだろう。
だから、どんな治療法で治る人がいても、驚くにはあたらない。それは、いわばスイッチを入れる役目をするだけなのだ。
あるいはそれは治療法でなくてもいい、何らかの状況でもいい。
大事な目的があって、それを成し遂げるまで周囲の予想を裏切って生き延びる、不治の病の患者なども、同様のことが体内で起こってのことなのだろう。
無意識レベルでの確信は、持とうとして持てるものではない。
自分の治癒力を有効に発動させるには、どうしたらいいのだろう。
いつの日か、それが自分にも来ることを祈り続ける。
愚かに見えるかもしれないが、「どこかに何かいい治療法があるのではないか」という期待は、悩める患者である以上、永遠に捨て切れるものではない。
もちろん自主性もなく人の勧めや誘いにたやすく乗ってはいけないことは承知した上で、抱くこの希求は、まんざら意味のないことでもないと思うのだ。