冬眠の季節




ある種の動物は冬眠をする。
冬の寒さの中、食物を確保できないから、体温を保つことができないから。
活動を止め体の代謝を落とし、エネルギーの必要量を落とすことで、少ないエネルギー産生量との、帳尻を合わせる。

そんなふうに、冬は厳しい。
私たち人間は、食料は得ることができるけれど、寒さの中、体温を保つのが大変なのは同じだ。
それには、夏よりも余分のエネルギーが要る。

冬期鬱病の人は、冬になると食欲が増すという。
精神のエネルギーレベルを保つのに、より多くの栄養の摂取が必要となるのだろう。

同じように、皮膚の弱い私は、冬になると睡眠時間が増える。
皮膚のレベルを生活に問題ない程度に保つのに、より多くの休息を必要とするようになる。

活動のレベルも、春から秋と比べ明らかに落ちてくる。
外出も社会参加も、不要不急のものははしょるようになる。
体温を含めて、活動できるエネルギーレベルにまで体を押し上げることが、他の季節よりも何だか大変なのだ。

朝目覚めても、体を起こすのがつらい、布団から出るのが大儀。
出かけるのが面倒、その身支度をするのも面倒。
こたつに入ったら出たくない、暖房の効いた場所から動きたくない。
誰しも感じるであろう、そんな冬のしんどさ。

だけど、人間は社会生活を営んでしまっているので、冬でも止まることができない。
会社も学校も役所も病院も、一年中同じように営まれ、電車やバスや車も走り続ける。

そう、雪国でも、雪をかいたり溶かしたりして、いつもとできるだけ近い生活を維持しようとする。
それって、かなり大変なことではないだろうか。

厳しい季節には、生活も無理なくトーンダウンさせられたらいい。
真冬だから真夏だからといって、仕事を休んだりしてしまう訳にはいかないけれど、それ以外の所で調節するなどして、無理をしないようにしたい。

とかく日本人は、頑張り過ぎる性向がある。
真面目に務めることはもちろん社会人としての基本だけれど、自分の身の丈をきちんと知っていることもまた、大切だ。

社会と折り合いをつけて、自分なりに生き抜いていかなければならない。
持って生まれたこの肉体で知能で、今まで続けてきてこれからも続けて行く努力で身につけた技能で、そして幾多の経験が鍛え育てた心で。

この冬の私の皮膚は、低湿度と低温の中でも、人に見せられる程度の外観を保ち、痛みなどの顕著な苦痛は無い。
それでも、秋までには乏しかった落屑(体から落ちる皮膚表面の粉)が出始め、触れると堅くざらついている。

ことに不穏と分かるのは、夜中の痒みを経過した後、朝の入浴で代謝が活発化された皮膚だ。
私は疲れて横になる。
そして、炎症に耐え、損傷に耐え、その修復と機能回復に全精力を傾けている、皮膚の努力を感じるのである。

昼寝も含めて1日12時間も寝てしまう日もあるが、今の自分の体にはまだそれが必要なのだろうと思っている。
「アトピー患者は冬に脱皮する。」と行っていたアトピーの友人がいた。
そんな一冬を重ねるごとに、私の肌は確かに少しずつ健康に近付いている。

冬の季節もまた、自然の摂理の恵みに違いない。

2009.2.  

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