[中高年まで広がるアトピー]




テレビ番組「みんなの家庭の医学」(テレビ朝日、7月23日放送)で、“中高年に最近増加している病気ランキング”というのをしていた。
厚生労働省の統計資料「患者調査」をもとに、病院を受診した患者に下された診断名の増加率を、1999年版と最新2011年版で比較して算出したものだ。

それによると、なんとアトピー性皮膚炎が、圧倒的増加を示している。
40-49才で第4位、50-64才では堂々の第1位、65才以上でも第2位!
(なぜかいずれも3.4倍)

20才台では減少しているものの、30才以上ではのきなみ増えているのだという。
診断が正しくないものが混じているかもという懸念を差し引いても、誰にも否定できない事実といっていいほどの、明瞭な結果がここにある。

30年くらい前までは、アトピー性皮膚炎は「大人になったら治る(アウトグローという)から、それまで対症療法でしのげばいい」と言われていた。
その理屈は、もはや通用しない。

たとえ苦労して幼少期を乗り切ったとしても、30過ぎたらまた同じ災難がふりかかってくるかもしれないのだ。
なんということだろう!


どうしてこんなふうになってしまったのか。
それには、どうしてアトピー性皮膚炎になるか、もしくはひどくなるのか、という原因の追求が欠かせない。

フィラグリン遺伝子というものの研究が進んだ昨今、アトピー性皮膚炎の発症する理由としては、従来のアレルギーよりも、皮膚のバリア機能障害の方が注目されている。
バリア障害があって皮膚から原因物質がくりかえし侵入するから、アレルギーを起こすようになってしまう、と考える。
だから、保湿剤をたっぷり塗ってバリアにすれば、それらが皮膚から入るのを防ぎ、アレルギーの進行を予防できる、という理論。

とはいえ、実際の症状への対処にはほとんどの場合、保湿剤だけでなく、アレルギーで生じた皮膚の炎症を治すステロイドやプロトピックの外用剤も必要とされている。
それはつまりすでにその時点で、もう何らかの原因物質に対してはアレルギーになっていることを意味する。

体内に入るとアレルギー症状を起こす物質を、アレルゲンと言うが、この場合、保湿でシールドする目的は、すでにアレルゲンである物を侵入させないことと、新たなアレルゲンを作らせないこと、の両方になるのだろう。


たしかに、幼少時と30才以降に悪化するという病状経過は、人体の生理的な皮膚保湿能の推移と一致する。
幼少時は皮脂腺や汗腺がまだ未熟であり、若い時期を過ぎれば再び皮膚の潤いは減少しはじめる。社会人としての心身へのストレスが、その減少に拍車をかける。

しかし、これは誰にでも起こりうることだ。
それがアトピー性皮膚炎の症状発現にまで至ってしまうのは、そのうちの一部の人だけである。
発症へ促す要因として、現在考えられていることを挙げてみた。

1)フィラグリン遺伝子の異常などがあり、乾燥しやすい皮膚だから
2)原因物質が入ってきたときにアレルギーになりやすい体質だから
3)生まれたときからすでにいくつかのアレルギーをもっているから

4)昔よりストレス源が多くなっているから
5)昔より環境中の原因物質が多くなっているから
6)昔より体内の状態を乱す物が多くなっているから
7)昔より体内の補正機構も働きにくくなっているから

8)小さい頃から塗ったステロイド外用剤(や保湿剤)が、皮膚を弱くしてしまうから

1)から3)が、アトピー素因と呼ばれる、遺伝的体質の中身と私は考える。4)5)は外的、7)は内的、6)は両方にかかわる要因。8)は意見の分かれる所だろう。

1)ゆえに異物が侵入しやすく、2)のIgEを産生しやすいとかいった体質ゆえに、それがアレルギーを形成(感作;かんさと呼ばれる)しやすくなる。

そして3)によって、世代を重ねるほどアレルギーはひどくなっていく。 幼少時の食物アレルギーなどの一部のものを除いては、いったん形成されたアレルギーは一生ものだから、次の世代にも遺伝子や細胞記憶を通じて受け継がれていく可能性がある。
生後すぐから激しいミルクアレルギーを示す子のように、まだ余り食べてもいない食品が食べられない子が増えているのは、そうしたわけだろう。

4)については、番組内で、ストレスによって皮膚のバリア機能が低下するという動物実験結果を紹介していた。
社会生活が高度になるにつれ、心身にかかるストレスも増加する。
今までできなかったことが可能になるのは、喜びでもあるが、新たな責務や戸惑いを生じることでもあり、皮膚も免疫能も傷めつけられるだろう。

5)飽くことなく生産されつづける、多種多様な物質の洪水の中で暮らす私たち。
アレルゲンになりうる飲食物、天然および合成の化学物質、ひいては電磁波など、環境中にあって日々摂取したり接触したりせざるをえない物質の種類も量も、格段に増えている。

6)アレルゲンとはならなくても、環境汚染や利便性追求により、不要や有害なさまざまな物が、日々私たちの体に飲食や呼吸や付着で取まれている。本来なら無害な物も、アレルギーとなればその人にとっては有害である。
それらは体の組織を損なうだろう。私たちの体はそれらをできるだけ大過なく処理し排泄するとともに、得た傷を修復する営みに明け暮れている。
いつも大忙し。これ以上は無理という、一触即発の準備状態だ。

7)今日の文明社会を得た結果、私たちは自然に即したシンプルな生活から遠ざかった。
早寝早起きの規則的な生活・バランスの取れた食事・適度な運動。
危機が起きたら対応できるような、あるべき健康体にからだを整えるために必要な、当たり前のことを実行するのがむずかしい。
自律神経系もホルモン系も免疫系も、酷使される世の中だ。

さて、8)。
医師の主流派は否定しているが、ステロイド外用剤が皮膚バリア機能を破壊していくという研究も、少数ながら頑としてある。
長期連用で皮膚萎縮、毛細血管拡張を生じたり、効きが悪くなったりするのは、誰もが認める科学的事実であるが、だとすれば少なくともステロイドの長期外用が皮膚の構造や機能に影響することは、まぎれもない真実である。
保湿剤もまた、あまりにも大量長期に塗り続けた場合の長期的影響は、未知数である。

このように、アトピー性皮膚炎の増加・難治化・再燃傾向には、これら1)から8)のすべての要因がからんでいるのだと思う。
(もっと他にもさらなる要因があるかもしれない。)


よくコップの水や浴槽があふれるのに例えられるが、病気が発症するのはたいがいの場合1つの原因のせいだけではなく、いくつもの要因が重なって、限界値を超えることによる。

要因が多数あるなら、対策も多岐にわたらなければならない。
1つの要因だけ除いて、「はい解決」とはいかない。

どの要因がどの程度多いか少ないかは、その人によってさまざまだろう。
自分の病状にかかわりの強い要因を、いくつかうまく減らせた人が、軽減や快癒を手に入れられることになる。

だから、1つの治療や養生で即効果が見えなくても、くさってはいけない。
むしろその方が普通なくらい、重度の人が当たり前の時代だ。
今しているその努力が、自分の浴槽に注がれる水を減らす役に立っているならば、決して、断じて、無駄ではない。さらにいくつかの努力を重ねるうちに、いつか成果が出るだろう。
それは、冒頭で書いたような、将来の再燃を防ぐ対策ともなる。

ステロイドやプロトピックは、今ある炎症を軽減させる薬。
いわば、浴槽の水をかき出してくれる。
水の勢いが強く耐えがたいなら、ステロイドやプロトピックを使えば、楽になれるというわけだ。
それでも、一方で水流を減らすことを意識しないなら、将来また再燃の憂き目にあうかもしれない。
また、使っているうちに、皮膚異常という1)の蛇口を大きくしてしまうかもしれない。

保湿剤は、効いているあいだは原因物質の侵入を軽減してくれる薬。
つまり、浴槽の一部に蓋(ふた)をしてくれる。
1)に対して現代西洋医学ができる、唯一の対策。
5)や6)の水流が増えるのも、防いでくれるかもしれない。
だが、保湿剤自体がアレルゲンや刺激物となったり、幼少時からの大量の外用が、皮脂腺や汗腺の成長を損なう可能性もある。

ちなみに2)3)の要因は、現代医学ではなくせない、どうしようもないとされているものだが、それを減らせないかという挑戦をしているのが、現在私も行っている、NAET施術である。


自分の立ち位置が見えれば、不安は少なくなる。
わけがわからないゆえの怒りは和らぎ、迷いが減って見通しを立てられれば、たとえ弱いにしても、希望というものを持つことができる。

こんなふうに生まれたという現実は、受け入れるしかない。
今の世に生きる苦しみがある代わりに、今の世に生きる楽しみもある。
ベストを尽くして、あとは運を天に任せて。
きっと、幸せに生きていけるはず。

2013.07.  


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