[何がいいかは人それぞれ]



. NHKスペシャル シリーズ人体II 遺伝子 第1集「あなたの中の宝物"トレジャーDNA"」、第2集「"DNAスイッチ"が運命を変える」はとても示唆的だった。
一言で言うと、今までなんとなく感じていた「体質」というものが、「科学的に」説明できるようになった、という研究進歩の紹介である。
第1集は2019年6月5日に、第2集は同12日に放送されており、内容はこちらのNHKページなどから要約を見ることができる。

細胞の核の中にあり遺伝情報を伝える二重らせん構造のDNAのうち、なんとわずか2%の部分しか知らないままに、今まで人類は遺伝子を語っていたのか。
蛋白質の設計図であるその2%の研究が優先されたのは当然ながら、残り98%をゴミのようなものと呼んだり、少しわかってきたら今度はトレジャー(宝物)と言い換えたり、人の捉え方は猫の目のようにくるくる変わる。
「科学」に裏打ちされた「標準的」見解とは、その時点における科学研究到達点に大きく左右されることを、改めて痛感する。

私たちが知ると知らないとに関わらず、体質を規定する遺伝情報群は、ずっと以前からDNAの中にあったのだ。
そして2%の設計図を基に、残り98%がそれら体内物質の製作を調整し、姿形や能力や体質を作り、健康状態や病気のなりやすさにまで影響し、環境に応じた変化をしつつ、脈々と受け継がれている。

多くの人が共通にある蛋白を体内に持ってはいても、その量や性質は異なる。
体の中に入ってきた物質に対する処理能力が、人によって異なる。
だから、体に良いと言われる食物を同じように摂っても、効果的な人とそうでない人がいる。
栄養や薬の摂るべき量も、おのずと人により違ってくる。
そんな、個人による特質の違いが、DNAに書かれていることがわかってきたという。

そしてその中には、スイッチのようにオン/オフが切り替わるものもあるそうだ。
オンのままのスイッチが子に受け継がれれば、体質の遺伝。
外から働きかけてオン/オフを切り替えられれば、環境の影響。
切り替えるための働きかけが、結局は食事や運動などという古典的なものであるところは笑えるが。


私たちアトピー患者は、脆弱かつ何にでも反応しやすいこの皮膚の性質に、いつも悩んで過ごしている。
そして、あらゆる努力をしていてもなお、改善のための努力を怠っているかのように思われる無理解に落ち込んだり、根治の望みがたい体質に、絶望しそうになったりするかもしれない。

アトピー体質が、DNAに書かれている科学的真実であるなら、それから逃れることはできない。
だがその遺伝情報の規定が、多数のスイッチの総和という、順応性を内包したものであるなら、適合させていくことは可能なはずだ。

人それぞれが違うなら、誰にでも絶対的に有用というものはない。
誰のアトピー性皮膚炎の皮膚症状にも薬理学的に有効なステロイド、タクロリムス(プロトピック)、デュピルマブ(デュピクセント)にしたところで、その人の人生に有用に働くかどうかは、人によりさまざまになりうる。
ストレスが悪い、不摂生は良くない、スキンケアの仕方、栄養の摂り方、薬の使い方、あまたの対策の工夫はある。
1つで解決するほど甘くはなく、多方面の取り組みが必要だろう。
長期にわたるから、時期的な対応や、頑張りと休憩に緩急をつけるのも知恵のうちだ。

アトピー性皮膚炎への指向性を持った体のあなたの人生が、より生きやすく豊かなものでありますように。
私はいつも祈っている。

2019.5   

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