子宮頸癌ワクチンをめぐる話題がかまびすしい。 このワクチンの必要性・有効性に大いなる疑義があり、副作用/副反応への懸念も多大であることは、すでに別項に書いた。 インターネットで「子宮頸癌ワクチン 副作用」と検索をかけると、膨大な記事がヒットする。その中には、「接種に反対」「(定期接種の)一時中止を」「なぜこんなワクチンを」「危険すぎる」「少女たちを薬害から守ろう!」といった接種に反対する切実な意見が多数みられる。
一般人がこんなにも実感や実体験をともなう不安を訴えているのに、なぜ、厚労省や専門家の反応はこうも鈍いのか。
その計画、すなわちワクチンを作るための試行錯誤の実験のくりかえしの過程のどこかで、遺伝子組み換え技術が、イラクサギンウワバという蛾(が)の細胞という培地が、好都合に作用したのだろう。
完成品となった薬は、まず動物実験、それから実際の人間への試用(治験)で、審判を受ける。
承認され薬が市場に出たあとも、安全性と有効性を確認する努力は続く。
前者の例としては、老人性の認知症に対し広く用いられていた、1998年の脳循環代謝改善剤4剤(商品名アバン・エレン・ヘキストール・セレポートなど)がある。
「過ちを改むるに、はばかることなかれ」だ。
ソリブジン事件のときも、薬が糾弾されることを促進したのは、製薬会社のインサイダー取引だった。
これらの教訓を生かすべきだ。
冷静で科学的姿勢であるために、統計や数という指標でみる。
統計を科学的根拠とするにあたっても、不十分な点がある。
どんな重い症状が出ても、副作用症状に原因ワクチンの名前が書いてあるわけではない。
このように副作用報告統計は、真実より少なく見積もられている可能性が何重にもある。
この統計結果を、科学の目でみるならば、例外的に多い発生数と言わざるをえないだろう。
ソリブジンのときも、治験段階で同じ副作用が確認されていたのに、それが隠されていたという事実があった。
都合の悪いことは、できるだけ言わないで済ませたいと思うのは、人の常である。
感染予防効果が、接種後9.4年までしか確認されていないことも。
そこまで知っても、今、感染予防することに意味があるだろうと判断する者だけに、接種をすれば良い。
先日テレビで、アメリカでは指定のワクチン接種をすべて済ませていないと就学できないという規制が行われているというニュースを見た。
激しい痛み・けいれん・関節の障害・筋肉の障害・脳機能の障害・・・
疑わしきは避ける。 2013.05. *追記 1:接種推奨中止*同2013年6月半ば、国がこの子宮頸がんワクチンの「推奨を止める」と発表した。副作用を訴える声が止まないため、それに応えざるをえなくなった形で、ひとまずは民意の勝利と言えるだろう。 それにともない6月下旬になって、接種後の痛みやしびれに対して、「CRPS (複合性局所疼痛症候群)」という病名が突如、浮上してきている。 この記事を書く際、5月に調べたときにはどこにもそんな病名は出ておらず(ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎はあった)、医療関係者の私でも今まで1度も聞いたことがなかった病名である。
おそらく今回起きた症状は、既存の上記などの病気の枠内にはめ込むことができなかったのだろう。 しかし、病名や診断がつくことと、原因が分かることとは全く別であることを、私たちは忘れてはならない。 病気の概念はしばしば、とりあえず見られる症状を総括してまとめあげるしかなく、その原因や発症機序や治療法はずっと後になってようやく解明されるのは、医学の世界では非常によくあることだから。
これから、子宮頸がんワクチンとこれらの副作用の因果関係について、厚生労働省の研究班による分析が行われる。 だが、権威筋のやり方の典型として、ほとぼりのさめた頃に分析結果を出し、「因果関係が証明できませんでしたから、ワクチンは安全です、推奨再開」となる可能性も高い。
「因果関係が証明できない」ことと、「因果関係がない」こととは、天と地ほども違う。
研究班は、グレイゾーンをすべてシロのように言うかもしれない。 ワクチンは、今現在は健康で治療の必要がない人に打つものだから、なおさらである。
だって、事実患者にその症状が起きて、まともな治療法すらなく苦しみ、人生をめちゃくちゃにされている、という事態は変わらない。 一般大衆はそんなふうに病名の権威やタイムラグにごまかされないよう、引き続き注視していかねばならない。
止めたのは当面の推奨だけ。
2013.06. *追記 2:厚生労働省検討会の結論* 予想通り、ほとぼりがさめるのを待って、接種推奨再開に向けた動きが起こっている。 本日2014年1月21日付の朝日新聞報道によると、20日の厚生労働省検討会は、ワクチンが直接の原因になった可能性を否定した。
長期的な痛みといった症状の多くは、「接種による痛みや腫れで、心身の反応を引き起こされ、慢性化した」のだと。
「針を刺す痛みやワクチン成分による腫れなどをきっかけに、恐怖、不安などが体の不調として現れ、慢性化した」とは、なんという、科学的でない説明であろう! それでもこれが、専門家の見解という科学的根拠とされ、近い将来、少しずつまた接種を勧める方向へと、流れを変えようとするのだろう。
体内に入った異種蛋白が、体にとって不都合な免疫反応を起こしうることは、説明できないどころか、科学的に当たり前のことである。
医師であるなら、医療関係者であるなら、患者を守れ。人々を守れ。
2014.01. *追記 3:髄液検査の異常* 朝日新聞2014年9月4日付で、「子宮頸がんワクチン接種後の症状 免疫異常で脳に障害か」という記事が載った。接種後異状の出た患者32人を検査、治療した医師の学会報告である。
患者は慢性痛、強い不安や恐怖のみならず、「視野が狭まる」「引き算ができない」といった多様な症状を訴える。これだけでも、心因反応などと片付けることはできない、脳や神経系の異常を疑うのが、医療関係者であれば当然と思うのだが。
できる限りの科学的事実を引き出す努力をし、まだそれが引き出せていない部分に関しては予断で決めつけることはしない。
そして厚生労働省や専門学会といった医療の社会的方針決定にたずさわる者たちの、あるべき姿勢とは?
新しく呈示された科学的事実を、彼らは受け入れるだろうか?
2014.09. [MIOの世界]トップページへ クリニックのサイトへ |